本日、Yahoo!ニュースで驚きの報道がありました――ルンバでおなじみの iRobotが破産を申請。長年親しんできた企業のニュースに、驚きとともに寂しさを覚えます。
ルンバのiRobot 米破産法を申請 – Yahoo!ニュース (ブルームバーグ):ロボット掃除機「ルンバ」を製造する米アイロボットは14日、米デラウェア州の連邦破産裁判所に連邦破産法1news.yahoo.co.jp
今回、破産に至るまでの経緯を AIの力を借りながら一つの表に整理し、歴代社長の経歴や表から読み取れる考察もまとめました。記事では収まりきらなかった詳細は、 ダウンロードコンテンツとしてご用意しています。
有名企業であっても倒産する時代だからこそ、破産の前兆を読み取り、次の行動に移す力が求められます。本資料が、勤務先や周囲の企業の危機の前兆を捉えるための有益な情報になれば幸いです。
iRobot破産から読み解く3つのポイント

① 経営陣とガバナンスの乖離
iRobotの破産で最も注目すべきは、経営陣とガバナンスが一致していなかった点です。2022年から2023年にかけて、CEOは創業者の Colin Angle が継続していました。しかし、実際の意思決定権は Amazon買収前提のガバナンス構造により事実上停止していたのです。
CEOはいるのに意思決定できない ― iRobotの“ガバナンス停止”
iRobotの破産において特に興味深いのは、CEOはColin Angleが継続していたにもかかわらず、会社の重要な意思決定がほとんど動かなかったことです。
これは一見すると「経営陣が何もしていなかった」と思われがちですが、実際には状況が複雑でした。2022年以降、会社はAmazonによる買収前提のガバナンス下に置かれており、大きな投資や戦略はすべて買収承認待ちの状態。形式上はCEOであっても、自由に方針を決められず、社内の意思決定はほぼ停止していました。
言い換えれば、CEOという“立場”はあっても、実際の意思決定権は外部(買収側や規制当局)に握られていたのです。この状況が「CEOはいるのに会社を動かせない」状態、いわゆるガバナンスの停止を生み、破産への時間稼ぎすら困難になってしまいました。
② 財務悪化・リストラ・口コミ悪化の連動
iRobotの経営状況は、売上・利益・社員の声の変化がほぼ同期していました。
- 2021年:売上はピークに達し、業績は好調
- 2022年:Amazon買収に依存する経営へ
- 2024年:買収計画が崩壊し、不安定化
- 2025年:信頼崩壊と破産申請
売上の低迷や赤字化とともに、社員の不満や不安も急増しており、財務状況と組織の士気が密接に連動することがわかります。
③ 社員口コミが示す構造問題
興味深いことに、社員口コミを見ると 人材・技術・企業文化は高評価 のままでした。しかし、経営判断やガバナンスへの評価は一貫して低く、意思決定の不透明さや戦略の不明確さに対する不満が蓄積していました。
これは、優れた人材や文化だけでは経営上のリスクを回避できないことを物語っています。
Colin AngleとGary Cohenの経歴

Colin Angle(創業者・元CEO)
- MITメディアラボ出身のロボット工学者
- 1990年に iRobot を創業
- Roomba など家庭用ロボットの商業化を主導
- 創業期から長期にわたり CEO として製品開発・技術戦略を牽引
Gary Cohen(再建型CEO)
- Timex CEO(2011〜2013):グローバルブランドの統括・再構築
- Qualitor Automotive CEO(2015〜2022):企業再建・財務改善を主導
- 消費財・自動車部品業界で再建・ブランド戦略に従事
- 2024年に iRobot CEO 就任、財務健全化・事業整理を担当
Gary Cohen就任が示す終わりに向かうサイン

社長交代と交代後に起きたリストラや再編、社員の口コミ、社長それぞれの経歴を分析すると、Gary Cohenの就任は 再建や精算を担う“短期的な整理屋” としての役割に近かったと考えられます。
- 創業者Colin Angleの退任
技術・製品開発を重視するAngleが辞任した時点で、会社はすでに外部依存(Amazon買収)や債務負担で自律的な経営が困難な状況にありました。
CEO交代は、会社を救うというより、既存資産を整理し外部に明け渡す準備の意味合いが強かったのです。 - Gary Cohenの役割
短期的な財務健全化・コスト削減・R&D縮小・製品ライン集約など、いわば “精算的再建” を実施。
長期戦略や企業文化の再構築にはほとんど手をつけられず、社員の心理的安全性やブランドへの愛着も守れませんでした。
💡 結論
創業者退任とCEO交代の時点で、iRobotは事実上「破産に向かう道筋」が決まっていたといえます。Cohenは会社を救うというより、債権者や買収先の要求に沿って最小限の損失で整理する役割を担ったに過ぎません。
まとめ

アマゾン買収に失敗した時点から経営はすでに終わりに向かっていました。社長交代やリストラ、事業再編はその前兆とも言えます。社員の口コミを見る限り、終わりを予測できる情報は揃っていたものの、ガバナンス停止や情報非対称の構造により、現場からは危機が見えにくい状況でした。
iRobotの一連の動きは、会社の終わりを予測するための良い材料として、私たちが勤務先や周囲の企業の危機の前兆を読み取る際に参考になるでしょう。



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