モロッコ発のコーヒーハウス「バシャコーヒー(Bacha Coffee)」が銀座に日本初となる旗艦店として12月11日にオープンしました。豪華な内装、1杯数千円のコーヒー、そしてスターバックスやブルーボトルコーヒーなどアメリカから進出するコーヒーショップが多い中モロッコ”初という珍しさからかなり日本では注目を集めたように思います。本記事では、バシャコーヒーの歴史から日本進出の戦略的背景までビジネス観点で掘り下げていきたいと思います。
モロッコ発「バシャコーヒー」が上陸 日本初の旗艦店が銀座にオープン(FASHIONSNAP) – Yahoo!ニュース モロッコ・マラケシュ発のコーヒーハウス「バシャコーヒー(Bacha Coffee)」が初上陸し、銀座に日本初となる旗艦 news.yahoo.co.jp
バシャコーヒーの起源

1910年 — モロッコ・マラケシュで誕生
バシャコーヒーのルーツは1910年、モロッコ南部の古都マラケシュにある宮殿「ダール・エル・バシャ(Dar el Bacha)」にまで遡ります。当時この宮殿はパシャ(高官)の住居であり、文化・社交の中心地でした。ここで提供されたコーヒーは、人々の会話や交流を演出する象徴的な存在で、単なる飲み物以上の意味を持っていました。
第二次世界大戦後の休眠
しかし、第二次世界大戦後、バシャコーヒーは一度歴史の表舞台から姿を消します。宮殿内のコーヒールームは閉鎖され、長い年月を経て朽ち果て、ブランドそのものも一時的に忘れられていました。
シンガポールの企業による再興
2019年、V3 Gourmetはモロッコ政府(国立博物館財団)から**フランチャイズ権(ブランドのグローバル展開権)**を取得しました。これにより、V3 Gourmetはバシャコーヒーを現代的に再構築し、国際市場でラグジュアリーブランドとして展開できるようになりました。
バシャコーヒーの海外展開の特徴
バシャコーヒーの海外展開は偶然ではなく、計算された戦略に基づいています。2030年までには世界の主要都市への出店を目指しており、日本でも大阪や京都などへの拡大計画があるとされています。
- シンガポール:富裕層と観光客が集まる都市で、ブランドの実験と収益化を両立。基盤作りの拠点。
- 中東・欧州:モロッコの物語やラグジュアリー性との親和性が高く、ブランドの世界観を強化。
- 日本:評価の厳しい市場で、味・サービス・空間すべての完成度が問われる“最終試験場”。「日本で通用すれば、どこでも通用する」と言われる市場。
日本進出の狙い

バシャコーヒーの日本進出は、短期的な売上を狙ったものではありません。主な目的は以下の3つです。
- ブランドの完成度を試す
- 世界に通用する「格」を得る
- ラグジュアリーとしての評価を固める
モロッコで神話を築き、シンガポールで事業化した後、日本で最終的な格付けを取る――これが狙いです。
なぜ直営ではなくフランチャイズを選んだのか
日本での運営は、**東急グループ(東急グルメフロント)**が担当しています。直営ではなくパートナーを選んだ理由は以下の通りです。
- 現地市場の知見を活かすため
東急グループは高級小売・飲食市場に精通しており、立地選定や運営に安心できるパートナーです。 - ブランド運営のリスクを分散するため
日本市場は評価が非常に厳しく、短期的な売上よりもブランドの格付けが重要です。 - TWG Teaでの実績を評価
シンガポール発の高級ティーブランド「TWG Tea」を成功裏に展開した経験を評価しての判断です。
まとめ

長期戦略を描きながらブランドを育てている点に、バシャコーヒー(V3 Gourmet)のすごさを感じました。モロッコで神話を作り、シンガポールで事業化し、日本でブランドの完成度を試す――こうした段階的な戦略を知ると、一杯のコーヒーを味わうだけでなく、ブランドの背景や経営のこだわりまで感じられ、より深く楽しめます。また、日本はローカライズに長けているため、今後どのようにブランドと融合させていくのかも楽しみです。
※掲載している写真はイメージです。実際の店舗や商品とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。



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