サイバー攻撃が日々巧妙化する中、企業のシステムを守るために欠かせない存在が「脆弱性診断士(セキュリティ診断士)」です。
本記事では、脆弱性診断士の仕事内容から1日のスケジュール、求められるスキル、そして年収の目安までをわかりやすく紹介します。
脆弱性診断士の仕事内容
脆弱性診断士とは、企業や自治体などの情報システムやWebサイト、アプリケーションを調査し、「セキュリティ上の弱点(脆弱性)」を見つけ出す専門家です。
目的は、攻撃者に悪用される前にリスクを特定し、対策を提案することです。
主な業務内容は以下の通りです。
- Webアプリケーションやネットワークの脆弱性診断
- OS・ミドルウェア・クラウド環境のセキュリティ評価
- 自動スキャンツールや手動テストによる検査
- 診断結果レポートの作成・報告会の実施
- 改善提案や再診断の実施
セキュリティ対策の最前線で活躍する、まさに“デジタルの医者”のような仕事です。
脆弱性診断士の1日のスケジュール(例)
以下は、都内のセキュリティ企業に勤める脆弱性診断士の平日のスケジュール例です。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 9:00 | 出社・リモートログイン、メール確認 |
| 9:30 | チーム朝会(進捗報告・新規案件共有) |
| 10:00 | Webシステムの脆弱性スキャン開始 |
| 11:30 | スキャン結果の確認・手動検証(SQLi, XSSなど) |
| 12:30 | 昼休憩 |
| 13:30 | 診断結果レポートの作成、脆弱性の深度分析 |
| 15:00 | クライアントとのオンライン報告会 |
| 16:30 | 再診断対応や新規案件の準備 |
| 18:00 | チーム内レビュー・日報作成 |
| 18:30 | 業務終了(残業は繁忙期に多少あり) |
集中力と正確さが求められるため、静かで落ち着いた環境で働く人が多い職種です。
脆弱性診断士に必要なスキル
脆弱性診断士には、技術スキルだけでなく論理的思考力やコミュニケーション能力も求められます。
【技術スキル】
- OSやネットワーク(TCP/IP、HTTP、DNSなど)の基礎知識
- Webアプリケーション構造の理解(HTML, JavaScript, PHPなど)
- セキュリティツール利用スキル(Burp Suite, OWASP ZAP, Nessusなど)
- SQLインジェクション、XSS、CSRFなどの攻撃手法理解
- クラウドセキュリティ(AWS, Azure, GCP)の知識
【ソフトスキル】
- 報告書を正確にまとめる文章力
- クライアントへの説明力・提案力
- 新しい脆弱性情報を常にキャッチアップする習慣
脆弱性診断士にあると便利な資格一覧
| 区分 | 資格名 | 難易度 | 内容・特徴 | 想定メリット |
|---|---|---|---|---|
| 🟢 未経験者向け | CompTIA Security+(セキュリティプラス) | ★★☆☆☆ | 世界的に認知されたセキュリティ基礎資格。攻撃手法・対策・リスク管理を広くカバー。 | 入門資格として信頼度が高く、未経験採用でのアピールに◎ |
| 情報セキュリティマネジメント試験(SG) | ★★☆☆☆ | IPA(情報処理推進機構)主催の国家試験。セキュリティ管理・組織運用の基礎を学べる。 | 国家資格として評価が高く、社内教育や入門研修にも利用される。 | |
| ITパスポート(iパス) | ★☆☆☆☆ | IT・情報処理の基礎知識を幅広くカバー。 | IT業界未経験者が最初に取る資格として人気。 | |
| CCNA(Cisco Certified Network Associate) | ★★☆☆☆ | ネットワークの基礎構築・管理知識を証明。 | ネットワーク診断や脆弱性検査時の理解が深まる。 |
| 区分 | 資格名 | 難易度 | 内容・特徴 | 想定メリット |
|---|---|---|---|---|
| 🔵 経験者向け | CEH(Certified Ethical Hacker) | ★★★★☆ | ハッカー視点での侵入手法・脆弱性分析スキルを実践的に習得。 | 実務での脆弱性診断やペネトレーションテストで評価が高い。 |
| CISSP(Certified Information Systems Security Professional) | ★★★★★ | 国際的な上級資格。セキュリティマネジメント・リスク管理の専門知識を網羅。 | シニアエンジニア・マネージャー層の登竜門。 | |
| OSCP(Offensive Security Certified Professional) | ★★★★★ | 実際の攻撃環境で手動ペンテストを行う実技試験。 | 高難度だが即戦力証明になる。診断エンジニア上級者の定番。 | |
| 情報処理安全確保支援士(RISS) | ★★★★☆ | 国家資格。セキュリティ運用・設計・脆弱性対応を体系的に学ぶ。 | 国家資格としての信頼性が高く、企業内での昇進にも有利。 |
💡補足ポイント
- 未経験から入るなら:「ITパスポート」→「Security+」または「情報セキュリティマネジメント」の順に取るのが◎
- 1〜3年経験者なら:「CEH」や「RISS」を目指すと即戦力アピールになる。
- 5年以上の経験者は、「CISSP」「OSCP」などで専門性・国際的評価を高めるのがおすすめ。
どういう人が向いている?
- コツコツ検証する作業が得意な人
- 論理的に物事を考えるのが好きな人
- 新しい技術やツールに興味がある人
- セキュリティに強い責任感や探究心を持っている人
いわば、「デジタル探偵」や「問題解決が好きな研究者タイプ」の人に向いています。
脆弱性診断士の年収・キャリアパス
年収は経験や所属企業によって幅があります。
| 経験レベル | 想定年収 |
|---|---|
| 初心者(1~2年目) | 約400万〜500万円 |
| 中堅(3~5年目) | 約550万〜700万円 |
| シニア/リーダー | 約800万〜1000万円以上 |
独立してフリーランスとして活動する人も多く、案件単価は1案件あたり30万〜100万円ほどになることも。
将来的には「セキュリティコンサルタント」や「CSIRTリーダー」「セキュリティアナリスト」などへのキャリアアップも可能です。
脆弱性診断士の求人動向(経験別まとめ)
| 区分 | 公開求人数(おおよそ) | 主な情報源 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 未経験者向け | 約 3,757件 | 求人ボックス「脆弱性診断 未経験歓迎」 | 全国の未経験歓迎求人。研修制度あり・教育体制充実の企業が多い。 |
| 未経験(東京都限定) | 約 1,668件 | 求人ボックス「東京都/脆弱性診断 未経験」 | 首都圏中心。SES・受託・自社開発など幅広い。 |
| 経験者(経験年数不明) | 約 1,404件 | doda「脆弱性診断・ネットワークセキュリティ」 | 実務経験ありを前提とする求人。年収500万〜800万円が中心。 |
| 経験者(条件付き求人) | 約 100件 | doda「セキュリティエンジニア(脆弱性診断・ネットワーク)」 | リーダー候補や即戦力採用。残業少・上流工程対応など条件指定型。 |
求人動向のポイントまとめ
- **全体の約7割が「未経験歓迎」**で、IT業界未経験からでも挑戦しやすい傾向があります。
- 首都圏(特に東京)は、研修付きのエントリー求人が豊富。地方では企業数が少なくなるため、リモート勤務対応企業が狙い目です。
- 経験者求人は数は少ないものの、報酬レンジが高く、年収600〜900万円台も多い。
- 企業によっては「脆弱性診断経験1年以上」などの条件で、SIEM・クラウド診断スキルを持つ人を優遇する傾向。
まとめ
脆弱性診断士は、目立たないながらも社会インフラを支える“縁の下の力持ち”です。
地道な検証作業の積み重ねが、企業やユーザーの安心につながります。
IT業界の中でも今後ますます需要が高まる分野のひとつです。



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