もうすぐ電通グループの2025年12月期第3四半期決算の発表が控えている。ここ数年、同社の経営を語るうえで避けて通れないのが、2013年のイージス・グループ4,000億円での買収である。国内市場の成熟を見据え、「グローバル化」と「デジタルシフト」を掲げた大型M&Aだったが、その後の展開は必ずしも順調とは言いがたく、今でも負の遺産を引きずっているように感じる。そこで、決算に向けて失敗要因について振り返ってみたいと思う。

当時ロンドンに存在していたイージスネットワーク
イージス買収の背景──なぜ電通は「世界」を目指したのか
まずは買収の背景について振り返ってみたい。
国内市場の限界と成長の飽和感
背景の第一にあったのは、国内広告市場の伸び悩み。
2000年代後半から日本の広告費は頭打ちとなり、企業の宣伝投資は横ばいであった。
テレビ広告の市場縮小に加えて人口減少や景気の長期停滞もあり、国内市場だけに依存していては、いずれ成長が止まることは明白であった。
実際、当時の電通は売上の約9割を日本市場に頼っており、「国内一強」から「世界で戦える企業」への転換が急務だった。
デジタル化の波とグローバル競争の加速
もうひとつの要因が、広告ビジネスのデジタルシフトである。
Facebook、Google、YouTubeといったプラットフォームが急速に台頭し、広告の中心がテレビや新聞からデジタルへと移行していた。
欧米ではすでにデジタル広告の運用力が代理店の競争力を決める時代に入りつつあり、日本市場中心の電通は明確に出遅れていたといえる。
イージスは、まさにこのデジタル分野で強みを持つ欧州系広告グループであった。
傘下の「Carat」「Vizeum」などはデータ活用やメディアバイイング力で定評があり、電通にとっては足りなかった“グローバル×デジタル”の即戦力であった。
世界ネットワークとグローバル顧客の獲得
イージスはロンドンを拠点に、欧州・北米・アジアなど100カ国以上に展開していました。
クライアントにはユニリーバ、マスターカード、マイクロソフトなど、グローバルブランドが名を連ねます。
つまり、イージスの買収は単なる「規模の拡大」ではなく、世界の有力顧客とネットワークを一気に取り込む戦略的布石でもあった。
この買収によって、電通は一躍「世界第5位から第3位の広告グループ」へと躍進。
国内企業の枠を超えた“グローバル・ホールディングカンパニー”への転換を目指した。
非連続成長への挑戦と「今しかない」判断
当時の電通は、国内の自力成長だけでは限界が見えており、M&Aによる非連続成長を掲げていた。
イージス買収はその最終段階ともいえる大型案件であり、買収額は約31億6,000万ポンド(約3,955億円)。
当時、欧米の大手広告グループ(WPP、Omnicom、Publicis、Interpublic)も再編を加速しており、
「このタイミングを逃せば、電通は世界市場で後塵を拝する」という危機感が経営陣にあったと言われている。
まとめ
個人的には海外展開でなぜM&Aを選択したのかかなり疑問だった。
疑問点を検証して、かつどうすれば海外で成功できたのかを追求したいが、
まずは次章では、このイージス買収がなぜ思惑通りに機能しなかったのか、その失敗要因を掘り下げていきたいと思う。



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