【簡単解説】銀行の政策保有株の買い取り停止による相談役への影響は?

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先日、銀行の政策保有株式売却の受け皿機関である「銀行等保有株式取得機構」が、株式の新規買い取りを停止するというニュースが報じられました。

前回の記事では、政策保有株とは何だったのか、そしてこの変化が今後、企業・投資家・消費者(労働者)にどのような影響をもたらすのかについて整理をしましたが、今回は相談役についてはどのような影響を受けることになるのかも併せてまとめることにいたしました。

https://note.com/embed/notes/n8bfd7496e65f

政策保有株式とは?簡単なおさらい

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政策保有株式とは、銀行や企業が取引関係維持のためなどに長期的に保有する株式で、従来は株式取得機構が買い取る仕組みがありましたが、政府はその期限延長を行わない方向で調整しています(つまり今後新たな買い取りは期待できない)。金融庁

これは、企業の資本構造とコーポレートガバナンス(企業統治)にとって大きな転換点になり得ます。


そもそも相談役とは?

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相談役とは、多くの場合、

  • 元社長・元会長
  • 長年経営に携わってきた人物

が就くポジションで、法的な意思決定権や執行責任は持たない一方で、経営陣に助言する立場とされています。

実務上は、

  • 公式な会議には出ない
  • しかし経営判断に影響を与える
  • 責任は現役の社長・役員が負う

という、非常に日本的な存在でした。

よく書籍でも指摘されていますが、口は出すが、責任は取らなくていい立場として長く機能してきたのです。


政策保有株の買い取り停止前、相談役はなぜ問題にならなかったのか?

政策保有株が多く存在していた時代、日本企業の株主の多くは、

  • 銀行
  • 主要取引先
  • グループ会社

といった関係性重視の安定株主でした。

これらの株主は、

  • 短期的な株価よりも取引関係の維持を重視
  • 経営への関与は限定的
  • 社内の慣行や暗黙の了解を尊重

する傾向がありました。

その結果、相談役が水面下で影響力を持っていても、株主からその存在を問われることはほとんどなかったのです。


政策保有株の買い取り停止後、何が変わるのか?

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①株主構成

買い取り制度がなくなり、政策保有株の縮減が進むと、株主構成は大きく変わります。

  • 機関投資家
  • 海外投資家
  • 市場を通じた個人投資家

といった、成果と説明責任を重視する株主の比重が高まります。

こうした株主は、次の点を強く意識します。

  • 誰が実質的に意思決定に影響を与えているのか
  • その判断は企業価値を高めているのか
  • ガバナンスは機能しているのか

ここで、相談役という存在は一気に「見えない存在」ではいられなくなります。

②企業の監督・助言機能

これまで相談役の助言は、経験、人脈、過去の成功体験に基づくものが中心でした。しかし今後は、その助言が、企業価値向上にどうつながるのかが問われます。単なる精神的支柱や重鎮ではなく、助言の中身そのものが評価対象になります。


③意思決定プロセス

これまでの日本企業では、表では取締役会、裏では相談役の一言という構図が珍しくありませんでした。

しかし、意思決定の透明性が求められる中で、非公式な影響力はガバナンス上のリスクと見なされるようになります。

現役の社長や役員にとって、「誰の判断なのか説明できない決定」は、
ますます許されなくなっていきます。


④ 投資家・株主からの期待

投資家が求めるのは、

  • 安定した慣行
  • 伝統的な役職

ではありません。

  • 成長戦略
  • 資本効率
  • 実効性のあるガバナンス

です。

相談役も例外ではなく、**「いること」より「何をしているか」**が問われます。


⑤ 相談役に求められるスキルセット

今後、相談役に求められるのは、

  • 市場や投資家目線の理解
  • ロジカルな助言
  • 影響範囲の自覚
  • 透明性への配慮

です。

単なる在任歴や功績だけでは、存在意義を示すことは難しくなります。


相談役は株主からの評価対象になるのか?

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結論から言えば、相談役は今後、間接的に株主からの評価対象になります

これまで相談役は、法的な役員ではなく、職務内容も開示されないため、
株主の関心の外にいる存在でした。
政策保有株を中心とした安定株主構成のもとでは、
その存在自体が問題視されることはほとんどなかったのです。

しかし、株主構成が機関投資家や海外投資家中心に変わる中で、
株主が重視するのは肩書ではなく、**「誰が実質的に意思決定に影響を与えているのか」**という点です。

相談役が非公式に経営判断へ影響を及ぼしている場合、その存在はガバナンス上のリスクとして捉えられます。株主が評価するのは相談役個人ではなく、相談役というポジションが企業価値にプラスかマイナスかです。

つまり、「口は出すが責任は取らない」立場は、株主目線では説明しづらく、許容されにくくなっています。

今後の相談役には、関与の範囲や助言の価値を説明できることが求められ、
見えない存在ではいられない時代に入ったと言えるでしょう。


相談役を廃止・縮小した企業例

すでに一部の企業では、相談役制度の見直しが進んでいます。

  • ソニーグループ
    相談役・顧問制度を原則廃止し、経営と助言の線引きを明確化。
  • 日立製作所
    グローバル基準のガバナンスを重視し、相談役ポジションを縮小。
  • トヨタ自動車
    経営体制の刷新とともに、相談役の影響力を限定的なものに整理。

これらの企業に共通するのは、
**「過去の慣行よりも、説明できるガバナンスを優先した」**点です。


まとめ

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政策保有株の買い取り停止は、単なる株式市場の制度変更ではありません。それは、日本企業を支えてきた“暗黙の了解”や“慣行”が通用しなくなることを意味します。相談役は今、守られた立場から、選ばれる立場へ大きな転換点に立っているようです。

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