日本企業を見ていると、こんな違和感を覚えることがあります。
「新規事業に力を入れる」と言っているのに、
なぜか裏で人や事業が静かに減っている。
成長を語っているのに、空気はどこか慎重だ。
これは経営の迷走ではありません。多くの場合、日本企業に特有の**「二重構造」**が働いています。今回は日本企業特有の二重構造について掘り下げたいと思います。
日本企業における「二重構造」とは何か
ここで言う二重構造とは、
- 表向き:成長・改革・新規事業・挑戦
- 裏側:整理・撤退・リスク管理・損失最小化
が同時並行で進む状態を指します。
重要なのは、どちらかが嘘というわけではない点です。
日本企業では、「成長したい」という意思と「失敗したくない」という意思が、同時に存在しやすい。
その結果、前向きなメッセージと、静かな後始末が併走する構造が生まれます。
なぜ日本では二重構造が生まれやすいのか

1. 急激な方向転換を避ける文化
日本企業では、
- これまでの方針を否定しない
- 誰かの判断ミスを正面から責めない
- 一気に舵を切らない
という傾向が強い。
そのため、
- 表では成長を語りつつ
- 裏で選別や整理を進める
という「段階的な調整」が選ばれやすくなります。
2. 失敗を言語化しにくい構造
「この事業は失敗だった」と明言することは、日本企業では依然としてハードルが高い。
代わりに行われるのが、
- 予算縮小
- 人の異動
- 担当者の交代
- 静かな撤退
つまり、言葉ではなく人事で方向転換を示すやり方です。
二重構造はどこに現れるのか
この構造は、決算資料よりも「人の配置と離脱」に強く現れます。
1. 成長を掲げる一方で、整理経験者が要職にいる
- 清算・撤退を経験した人材が役員直下に置かれる
- 銀行・財務・リスク管理出身者の影響力が増す
これは「最悪のケースも想定している」サインです。
2. 長く在籍していた社内専門家が去る
長期在籍者は、
- 過去の成功体験
- 暗黙のルール
- 経営の本音
を理解している存在です。
その人物が静かに去るとき、会社はすでにフェーズを切り替えている可能性があります。
表の言葉より「誰が何を任されているか」を見る
日本企業では、
- スローガン
- 社長メッセージ
- 中期計画
よりも、
- 誰が残り
- 誰が辞め
- 誰が要職に就いたか
のほうが、戦略を正確に語ることがあります。
これは日本企業が未熟だからではありません。衝突を避けながらリスクを分散するための、一種の合理性でもあります。
役員が「何を勉強しているか」を観察する

意外と見落とされがちですが、役員がどんなテーマを学んでいるかは、会社の将来を読む重要なサインです。
成長フェーズのサイン
- 新規事業、イノベーション、DX、海外展開などを学んでいる
- スタートアップや他社事例の勉強会に顔を出す
- 外部の有識者と積極的に議論している
この場合、「まだ攻める余地がある」と役員自身が感じている可能性が高いです。
整理・縮小フェーズのサイン
- 事業再生、M&A、ガバナンス、コンプライアンスを学び始める
- 財務、キャッシュフロー、リスク管理の話が増える
- 外部セミナーより、弁護士・会計士との打ち合わせが増える
表では語られないですが、出口や最悪ケースを真剣に考え始めた兆しとも読めます。
危険なサイン:役員が「勉強しなくなる」
もっとも注意すべきなのは、役員が新しいことを学ばなくなる状態です。
- いつも同じ話しかしない
- 過去の成功体験ばかり語る
- 「うちは大丈夫」という言葉が増える
これは成長でも整理でもなく、判断を先送りしている停滞フェーズに入りつつあるサインかもしれません。
二重構造は悪いことなのか
必ずしもそうではありません。
- 成長に全振りして失敗する
- 整理に偏って縮こまる
そのどちらも避けるために、日本企業は成長と整理を同時に走らせる道を選んできました。
問題になるのは、この構造を
- 読めない
- 気づかない
- 誤解する
場合です。
まとめ:日本企業を見るときの小さなヒント

日本企業を観察するとき、こんな視点を持つと景色が変わります。
- 成長を語っているが、誰が配置されているか
- 新規事業が多いが、誰が止め役なのか
- 人が辞めた理由は「個人事情」だけか
人の動きは、言葉になる前の戦略を映します。
日本企業に特有な二重構造は、それを読み解くための、格好の手がかりなのかもしれません。
この記事が参考になったと感じていただけたら、コーヒー1杯分のご支援をいただけると励みになります。



コメント