世界通貨を発行せよ 読書メモ

経済・お金

本書は、現代通貨システムにおける矛盾や問題点を指摘し、
仮想通貨やMMT理論のメリットや課題を挙げながら世界通貨の発行についての理論を展開している。
内容を簡単にまとめると以下のようなことが書かれていた。

現代通貨システムの矛盾

現代の各国の通貨のほとんどが貴金属との交換権を持っていない「ただの紙切れ」
現代の通貨の仕組みとは綿密に制度設計されたものではなく、
時代の波にもまれながらなし崩し的に作られたもの。
だから現在の通貨の仕組みが正しいとは誰も言えない。
むしろ誰から借金をしないと通貨が社会に流れない、
借金が増え続けないと世間の金の流れが滞ってしまうという巨大な矛盾を抱えている。

現代通貨システムおける課題


・予算不足の国際機関:世界の環境や平和を守り貧困や災害から救うための十分な予算がない。
(国連の予算は広島県と同じくらい)
・貧富の格差
・富裕層の逃税
・貿易戦争
・大企業や金持ちの要求が最優先

お金が社会に流れるルート


①中央銀行がお金を発行する。
②各銀行にお金を貸し出す。
③大企業や投資家などにお金を貸し出す。
④大企業から中小企業や従業員などにお金が支払われる。

アメリカが黒字でも赤字でもアメリカは良くならない

アメリカが赤字の場合
①アメリカの輸入が増える
②アメリカ・ドルが世界中にばら撒かれ基軸通貨としての役割を果たす
③アメリカの貿易赤字が膨らむ
④アメリカドルの信用性が失われる

アメリカが黒字の場合
①アメリカの輸出が増える
②アメリカの貿易赤字が減る
③世界中のアメリカドルがアメリカ本国に回収される
④世界の基軸通貨の流通量が減り世界経済に支障をきたす
→アメリカはドルを世界中に供給し続けなければならない

アメリカが経済破綻したりデフォルトした場合の影響
■日本
借金が踏み倒される
アメリカ以外の国との貿易収支は赤字だがアメリカに対しては黒字
アメリカが破綻してすることで資源を輸入するためのお金を貿易で稼げなくなる。

■中国
貿易収支はアメリカに対しては黒字
資源も食料も国全体を賄えるほどないので、輸入している。
アメリカが破綻してドルに変わって人民元を基軸通貨にする場合
アメリカ同様に赤字であり続けて、人民元を流通させないといけない。

現代の国際金融システムの中では、どこの国の通貨が基軸通貨になっても必ずそうなってしまう。

MMT理論

アメリカのハーバード大学教授ランダルレイなどが唱えた理論
自国通貨で国債を発行している国は財政赤字を気にすることなく国債を増発することができる。
国債の発行量を適切に調節していれば異常なインフレも起こらない。

上記の理由
自国の通貨建で国債を発行している国は国債を償却するには自国の通貨を増刷すればいいだけ。
政府は事実上自国通貨を発行する権利を持っているから、国債をいつでも償却(返済)できるから。

他国の通貨建で国債を発行する場合、他国の国債を償却するために、その分自国通貨を用意しなければならない。また、自国通貨が安くならないように配慮しておかないといけない。
自国通貨が安くなったばっかりにデフォルトを起こす国も度々出ている。

そもそも政府は財政赤字を気にせずに財政投資を行うことができる。
政府は税収を気にすることなく公共投資を行うことができる。
政府は財政赤字に縛られることなく、通貨を発行することができる。
税収ではなく通貨発行により、歳出を賄うことができる。
不要な公共投資がないように厳しく監視し、有効な公共投資は思い切って行うべきとものべている。
行うべき公共投資として、休職しているすべての人に仕事を与える社会保障プログラムの創設を提言している。事実上失業がなくなる。
しかし、MMTはツッコミどころが多くあり、まだ練りきっていない。

仮想通貨理論

  • 誰も価値を保証してくれない
  • 価値がゼロになる可能性もある。
  • 国家機関がコントロールしない真に人々のための自由な通貨という崇高な目的とは裏腹に実際には一攫千金を夢見る人たちが群がっているだけ。
  • 安全性にも問題あり。すでに何度も大規模な流出事件が起きている。
  • ブロックチェーンの技術は安全で画期的なものと評価されているが、通貨運営の仕組み自体は不安定なことこの上ない。
  • ネット上で取引の全てを多くの人が監視できるため、不透明な取引は存在しないということになっていた。
  • しかし実際は流出事件が起きた時に誰がとったのかさえ判明しないケースが多かった。
  • 国家機関によらない人類のための自由な通貨となっているが、実際は発行量などの決定は一部の運営者が行なっており参加者などが関与する余地は全くない。また仮想通貨の創設メンバーたちが莫大な富を手にしているだろうことは確実。つまり貧富の格差を助長するだけ。

仮想通貨により「人が信用すれば通貨は流通する」ことが証明された。

仮想通貨と比較した現代通貨の安全性

貴金属などとの交換保証はない。
価値の保証は国家が威信をかけておこなっている。
各国の中央銀行は相当の貴金属や金目のものを保有している。
もし通貨の信用が無くなれば国家は国の資産を使うなど最大限の努力をして信用維持に努める。
銀行の電子取引は仮想通貨よりもはるかに多くの取引があり、莫大な金額が毎日毎日動いている。
それなのに仮想通貨のような大きな資金流出事件などはこれまで起きていない。

新世界通貨

仮想通貨やMMTのいい面を抽出すれば、現代のお金の欠陥を修正した新しいお金の仕組みを作ることができる。
世界各国が協調してお金を発行する。そのお金は銀行からの融資という形ではなく、
創出したお金を世界の人々に配布するという形で流通させる。
これまで銀行からの貸し出しと結びついていた理由はお金の価値を保持するため。
無料同然のものを価値があるものとするには、借用書をいう形を取るのが最も容易であり、信用が置けるものだったため。
逆にいうと、お金の価値さえ保持されれば必ずしも融資と結びつける必要はない。

世界通貨発行の手順
①新世界通貨を発行する国際機関を作る
②新世界通貨を発行する
③加盟国は新世界通貨と自国通貨の兌換を保証する
④新世界通貨を世界に流通させる

  • 発行額と使途は厳重な管理が必要
  • インフレが起きない程度の発行額を各国の専門家が算出する。
  • お金を発行したら、そのまま国民に直接支給する。
  • 政府を通じて支給すると困っている人や本当に貧しい人に行きつかない可能性がある。
  • 発行当局がそれぞれの国に対して国民に支給されているか査察する。
  • 国民に渡ることで消費に向かい、景気刺激策になる。
  • 難民や移民の受け入れなど先進国の負担が減る。
  • 通貨量の調整をリーマンショックや世界大恐慌のような金融災害はほとんどなくなる。
  • 間接的に富裕層から税金を取ることができる
  • 税金は社会に出ているお金を国家が吸い取る形で徴収されている。
  • それが支出されるまでの間は増えるどころか減ることになる。
  • 社会全体の通貨の量を減らす作用を持っている。つまり景気を停滞させている。
  • 新世界通貨は、お金をのものの量は増えるし、
  • 直接税金を取るわけではないので、個人や企業から吸い上げられるお金はなくなる。

本書を読んでの感想

内容が正しいかはわからないが、現在の経済システムの課題を認識して俯瞰するきっかけになった。

通貨にフォーカスした内容になっているが、
国民の富が増えても生産性が向上しなければ
物質的に豊かになれない気がする。

自分なりにどうあるのがベストなのか学びを深めて考えてみようと思う。

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